2025.02.04
先日南アルプス市方面にて強風で屋根の棟板金が捲れているので見てほしいとの相談を受け、見に行ってまいりました。
屋根はガルバリウム鋼板の横葺きですね。
ガルバの横葺きで棟下地が外れるほど劣化することは珍しいです。
火災保険の「風災」が適用できそうなので、お客様にその旨をお伝えした上、見積書と写真を渡し、保険会社に連絡していただきました。
やはり保険が適用されるとのことで工事を始めます。
なぜこんなに棟下地が劣化しているのかが解りました。
隅棟(斜めの棟部分)の屋根材に立ち上げ加工を施してありません。
板金屋根はスレート屋根と違い、工具で曲げ加工が出来るので、本来は屋根材を曲げ加工して棟下地に水が行かないようにするのですが、これがなされていません。
板金屋根の曲げ加工をせず、スレート屋根同様に屋根材の上に棟下地を乗せてビス留めしてあるだけです。
つまり、屋根材から伝った水がそのまま棟下地である貫板を濡らすので劣化が早まります。
それどころか貫板を留めつけてあるビスは屋根材や防水であるルーフィング、野地板も貫通しているので、ビスを伝って天井小屋内で雨漏りしていた(している)可能性もあります。
プロとしてちょっと考えられない仕事です。
新しい棟下地を取り付け。これなら下地が濡れる可能性がグッと減る。
屋根材隅棟部の曲げ加工は確かに一手間ではありますが、これをしておかないと今回のように下地が外れたり、雨漏りに直結したりするので後々問題になったらすれば会社の信用に関わります。
一手間を惜しむ(手を抜く)理由は次の場合が考えらえます。
①単純に面倒くさかった。
②職人の知識や「こう納めたらこうなる」といった想像力が欠けていた。
③このくらいなら大丈夫、雨漏りしないという根拠のない自信があった。
④施工単価が安く、その分複数の現場を回して稼がないといけないため早く工事を終わらせようとした。
①については論外です。プロの資格はありません。
②新人さんならそうかもしれませんが、そもそも新人さんにやらせるなら指導員をつけるか納め方を教えるなりしそうなものです。
また、今回の現場の他の部位の納まりには問題が無かったことから知識が無いとも考えにくいです。
③これってホント何なんでしょうね?その自信どこから来るん?って感じです。経験に基づいているのなら尚更この施工は良くないと考えそうなものですが…
④多分これが理由なのだと思われます。ハウスメーカーの仕事は施工単価が低く、数をこなさなければ利益が出てこないので手間をかけずに納めて次の現場へ向かうルーティンが確立されているのだと思われます。
気持ちは判りますが、雑な施工をされた方はたまったものじゃないと思いませんか?
建築用語で「逃げ仕事」という言葉があります。
見えない箇所ではあえて最上ではない次善の仕事をして、表面に破綻を見せないようにすること(例えば近くで見なければわからないような細かな見てくれの細工を施すのではなく、機能を果たしている納まりになっていれば見た目が簡素でもOK)を言うのですが、今回の納まりはその機能を果たしていないので「逃げ仕事」ではなく「抜き仕事」ですね。
新しい棟包みを取り付けました。
よそはよそ、うちはうち。
人の振り見て我が振り直せではありませんが、私達の施工は「当たり前のことを当たり前のように行う」凡事徹底で日々改善しながら行き続けたいと感じた現場でした。